少し前の山の話 雲取山2009年08月30日 11時54分41秒

 2008年に雲取山へ登ったときのことで、日記に書かなかったことを、あらためて記しておこうと思う。

 まもなくテント場に着くという頃に、ハンターの人に声をかけられた。非常に蒼白い顔をした人で、眼鏡をかけていた。「犬を見かけなかったか?」という。一度も見ていないと答えると、「そうですか」といって去っていた。それから、何度か犬に呼びかける声や、笛の音が聞こえた。
 自分がテント場に到着し、テントを立てる頃には、その探す声も消えていた。犬を見つけることができて、帰ったのだろうか?
 食事を済まし、眠りにつく。夜中にテントの外に出て、空を見上げると雲の切れ目から星空が見える。
 また眠りに着くと、遠くで犬の吠える声が聞こえる。ひょっとして、あの探していた犬なのだろうか?飼い主と会えなかったのか?動けないのか?犬の声は、短い間隔で聞こえ、やかましいほどであった。探している。訴えている、必死な感じであった。いったいあの犬はどこまで遠くに行ってしまったのだろう?
 その声にも慣れて、また深く眠ってしまった。たまに眠りが浅くなると、また犬の声が聞こえる。しかし、さきほどに比べると、明らかに弱々しい。それに、テントのまわりがパサパサと音を出すようになってきた。少しだけ、外を見ると、雪が降り始めていた。

 いつのまにか、あの犬のさびしい弱々しい声は聞こえなくなっていた。

 再び寒さで目を覚まし、服を着込んでシュラフにもぐる。まもなく、犬の一音節だけの、長い、そして大きな吠える声が聞こえた。1回きりだった。気になったので、耳を澄ませていた。何も聞こえなかった。

 また眠ってしまった。すると、また一声の弱い吠える声が聞こえて目を覚ました。それが最後だった。
 夜明け前、テントから出ると周りは20cmほどの積雪になっていた。

コメント

_ BHW ― 2017年04月14日 03時48分36秒

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